0-01 AIエンジニアという仕事
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AIエンジニアが何を作り、何に責任を持つ仕事なのかを知り、この課程の全体地図と自分の進むルートを決めます。
この章でできるようになること
- AIエンジニアとMLエンジニア・データサイエンティスト・研究者の違いを説明できる
- LLMアプリ開発の仕事の流れ(課題発見から運用改善まで)を具体例で説明できる
- 求人で求められるスキルと、AIがコードを書く時代に価値が上がるスキルを挙げられる
- 課程の全体像を把握し、自分の目的に合うルート(app / auto / ml)を選べる
- アプリ内でPythonのコードを実行し、print で結果を表示できる
この章は、課程全体の入り口です。「AIエンジニア」という言葉は広く使われていますが、指している仕事は人によってかなり違います。ここでは、この課程が目指す仕事を具体的に定義し、その仕事が実際にどう進むのか、求人で何を求められるのか、そしてAIがコードを書くようになった今、人間のエンジニアに何が求められるのかを整理します。
読み終えるころには、これから先の76章が何のために並んでいるのかが見えるはずです。長い課程を途中で投げ出す一番の原因は「今やっていることが、最終的に何につながるのか分からない」ことです。だから最初に地図を渡します。
章の後半では、アプリの中で最初のPythonコードを実行します。まだ文法を学ぶ必要はありません。ボタンを押してコードが動き、結果が表示される。その感覚に慣れることが目的です。
AIエンジニアとは何をする人か
ある一日の例
まず具体例から始めます。ある会社の総務部には、毎日のように同じ質問が届きます。「有給休暇は入社何か月後から使えますか」「出張の日当はいくらですか」「在宅勤務の申請はどこからですか」。答えはすべて社内規程に書いてあります。しかし規程は200ページのPDFで、社員は探すのを諦めて総務に電話をかけます。
ここでAIエンジニアが呼ばれます。作るのは「社内規程に基づいて質問に答えるチャットボット」です。ただし、やることはチャット画面を作るだけではありません。
- 規程のPDFを読み込み、検索できる形に分割して保存する
- 質問が来たら関係する条文を探し出し、LLM(大規模言語モデル、Large Language Model)に「この条文だけを根拠に答えて」と頼む
- 回答に根拠の条文番号を付け、規程に書いていないことは「分かりません」と言わせる
- 実際によくある質問を50件集め、正しく答えられるかを測る
- 間違えた質問を分析し、検索方法やプロンプト(LLMへの指示文)を改善する
- 本番で使われ始めたら、ログを見て、費用と応答時間と回答の質を監視する
この一連の仕事のどこにも「AIモデルそのものを訓練する」作業は出てきません。モデルはGoogleやAnthropic、OpenAIなどが作ったものを、API(Application Programming Interface、プログラムから機能を呼び出す窓口)経由で使います。AIエンジニアの仕事は、既にある強力なモデルを、特定の業務で信頼して使える製品に仕立てることです。
定義
この課程では、AIエンジニアを次のように定義します。
学習済みの基盤モデル(LLMなど)をAPIで使い、データ・ツール・業務の流れと組み合わせて、評価し、製品として運用できる形にするソフトウェアエンジニア。
基盤モデル(foundation model)とは、膨大なデータで事前に訓練され、さまざまな用途に転用できる大きなモデルのことです。この定義の要点は3つあります。1つ目は、モデルを作るのではなく使う側だということ。2つ目は、モデル単体ではなく、検索・データベース・外部ツールなどと組み合わせたシステムを作るということ。3つ目は「評価し、運用する」まで責任を持つということです。3つ目が抜けると、デモでは動くが現場では使えないものができあがります。
roadmap.sh というエンジニア向けの学習ロードマップでも、AIエンジニアは「学習済みモデルと既存のAIツールを使って体験を改善する人」で、新しいモデルを一から作る研究者やMLエンジニアとは区別されています。2023年に「AI Engineer」という呼び名を広めた swyx の記事でも、Karpathy(OpenAIの創設メンバーの一人で、テスラのAI部門を率いた研究者)の「何も訓練せずにこの役割で大きく成功できる」という言葉が引用されています。
似た職種との違い
AIに関わる職種は他にもあります。違いを表にまとめます。
| 職種 | 主な仕事 | 扱う中心 | 必要な数学の深さ |
|---|---|---|---|
| AIエンジニア(この課程) | 既存のモデルを使って製品を作り、評価し、運用する | API、プロンプト、検索、ツール、評価、ソフトウェア設計 | 統計の基礎(評価に必要な分) |
| MLエンジニア | 自社データでモデルを訓練・調整し、本番で動かす | 学習パイプライン、GPU、モデルの配信 | 線形代数・確率・最適化を実務で使う |
| データサイエンティスト | データを分析し、意思決定に役立つ知見を出す | 統計、可視化、予測モデル、ビジネス指標 | 統計を深く |
| 研究者 | 新しいモデルや学習手法を考え、論文にする | 理論、大規模実験 | 最も深い |
境界ははっきりしていません。AIエンジニアでもモデルの微調整(ファインチューニング)を判断する場面はありますし、MLエンジニアがLLMアプリを作ることもあります。ただ、入口として「どこに主な責任があるか」を押さえておくと、学ぶべきことの優先順位が決まります。
AIエンジニアになるために、大学レベルの数学を先に修める必要はありません。必要になるのは、評価結果を正しく読むための統計の基礎(平均、ばらつき、サンプル数と誤差)と、ベクトルの類似度の直感です。どちらも課程の中で、コードを動かしながら学びます(→ 4-04 評価のための統計と確率、→ 4-08 ベクトルと埋め込み)。MLエンジニアを目指す人には、Part 4〜5でより深い内容を必須にしています。
仕事はどう進むのか
6つの段階
LLMアプリの開発は、おおむね次の流れで進みます。
- 課題の発見
- 要件の整理
- プロトタイプ
- 評価
- 本番化
- 運用と改善
それぞれの段階で、何をするのかを見ていきます。
- 課題の発見:業務のどこに時間がかかっているか、どこでミスが起きているかを見つけます。ここで重要なのは「そもそもLLMが必要か」を疑うことです。決まった形式の書類から数字を取り出すだけなら、普通のプログラムで十分なこともあります。
- 要件の整理:誰が、何を入力し、何が出てくれば成功なのかを決めます。「回答の9割が規程どおりであること」「1件あたりの費用は1円以下」「個人情報は外部に送らない」のように、測れる形で書きます。
- プロトタイプ:最小限の仕組みを数日で作り、実際の質問で試します。今はここがAIのおかげで劇的に速くなりました。
- 評価:用意した質問セットで正答率を測り、失敗の種類を分類します。プロトタイプが「なんとなく良さそう」から「何割正しい」に変わる段階です。
- 本番化:エラー処理、再試行、ログ、セキュリティ、費用の上限などを整えて、実際の利用者に使ってもらいます。
- 運用と改善:ログを読み、新しい失敗を見つけ、評価セットに加え、改善し、改善したことを再び評価で確かめます。
この流れは一方通行ではありません。評価してみて要件が曖昧だったと気づき、要件に戻ることはよくあります。むしろ、何度も行き来するのが普通です。
4つの具体例
同じ流れを、日本の職場でよくある題材に当てはめてみます。
| 題材 | 課題 | プロトタイプの中身 | 評価で測ること |
|---|---|---|---|
| 社内規程Q&A | 総務への同じ問い合わせが多い | 規程を検索し、根拠付きで答える(RAG) | 正しい条文を引けたか、回答が条文に忠実か |
| 問い合わせの自動分類 | ECの問い合わせメールを人が振り分けている | 本文から「返品・配送・支払い・その他」を判定し、JSONで返す | 分類の正解率、特に「返品」の見逃し率 |
| 議事録の要約 | 会議の録音から議事録を作るのに1時間かかる | 文字起こしから決定事項・宿題・期限を抜き出す | 決定事項の抜け漏れ、誤った担当者名 |
| 営業支援エージェント | 営業日報を読んで次の提案を考えるのに時間がかかる | 日報・顧客DB・在庫を検索するツールを使い、提案の下書きを作る | 提案の根拠が正しいか、誤った在庫情報を使っていないか |
RAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)とは、関連する文書を検索してからLLMに渡して答えさせる仕組みのことです。エージェント(agent)とは、LLMが自分で「次にどのツールを使うか」を判断しながら、複数の手順を進める仕組みです。どちらもこの課程の中心的なテーマで、Part 6とPart 7で詳しく扱います。
表の右端の列に注目してください。どの題材でも、「何を測れば良し悪しが分かるか」が具体的に決まっています。これがないと、改善したつもりが実は悪化していた、ということが起きます。
日本の企業では、PoC(Proof of Concept、概念実証。小さく試して実現可能性を確かめる段階)までは進むものの、本番に至らないプロジェクトが少なくありません。よくある原因は、成功の基準を事前に決めていないことです。「デモで好評だった」は成功基準になりません。PoCを始める前に「この質問セットで8割以上正しければ本番に進む」のように決めておくと、判断がぶれません。この進め方は → 9-01 要件定義から納品まで で通しで練習します。
本番で起きること
プロトタイプと本番の差は、想像より大きいものです。プロトタイプでは、作った本人が想定した質問しか来ません。本番では、想定外の質問、誤字だらけの質問、規程に書いていない質問、悪意のある入力が来ます。APIが一時的に混雑して失敗することもあります。1日1万件の質問が来れば、1件1円の費用も月30万円になります。
だからAIエンジニアには、LLMの知識だけでなく、普通のソフトウェアエンジニアとしての基礎体力が必要です。エラー処理、テスト、ログ、データベース、セキュリティ、費用の見積もり。これらはPart 2とPart 8で扱います。
求人では何が求められているか
海外の求人の集計
実際の求人を見ると、求められるスキルがはっきりします。2026年に公開された求人分析を3つ紹介します。どれも集計方法が異なり、査読された研究ではないので「傾向を示すもの」として読んでください。
| 調査 | 対象 | 主な結果 |
|---|---|---|
| Axial Search | 米国の求人 43,480件(2026年1〜7月) | Python 62%、クラウド 55%、基盤モデル 51%。資格より「実際に作って動かしたもの」のほうが重視される |
| Alexey Grigorev のガイド | 欧米5都市の求人 895件(2026年1月) | Python 82.5%、TypeScript 23.4%。RAG 35.9%、プロンプト設計 29.1%。Docker・CI/CD も多い |
| aijobprep | 198社の求人 3,647件(2026年8月) | 企業単位で、Python 83%、LLM 83%、API・バックエンド 82%、エージェント 81%、オブザーバビリティ 78%、評価 68%、RAG 40% |
オブザーバビリティ(observability、可観測性)とは、システムの中で何が起きているかを、ログやトレース(処理の記録)から外部で把握できるようにすることです。LLMアプリでは「どんな質問に、どの文書を使って、どう答え、いくらかかったか」を後から追えるようにすることを指します。
3つの調査に共通する点をまとめると、次のようになります。
- Python は事実上の必須言語。次点はTypeScript。
- LLMのAPIを使いこなすことは、もはや特別な技能ではなく「前提」。aijobprep の分析は「LLMの仕事はもはや専門ではなく、最低条件だ」と書いています。
- バックエンド(サーバー側のプログラム、API、データベース)の力が求められる。
- エージェント、評価、オブザーバビリティが、ここ1〜2年で急に増えた。
- 特に評価は、198社の調査でRAG(40%)よりも多い68%の企業が挙げている。
日本の求人の傾向
日本の求人も見ておきます。研究ノートで確認できた求人は数件と少ないため、ここも傾向として読んでください。
- 「RAG」「エージェント」「大量文書の理解」を掲げる求人が目立つ。
- 「PoCから本番化まで」を6〜12か月で回す、という書き方が多い。
- 製造業など、業界の知識(ドメイン知識)が歓迎条件に入っている。
- 必須条件には、Webアプリやサーバー側の開発経験3年以上、のように、ソフトウェア開発の基礎が並ぶことが多い。
- 一方で「LLMを使った開発経験(業務での実装、または個人開発レベルでも可)」と、個人開発を明示的に認める求人もある。
年収は経験者で600万〜1,500万円程度の幅がありました(2026年10月時点、求人サイト掲載の数件より)。
正直に言っておくこと
ここは率直に書きます。未経験の人をいきなり「AIエンジニア」として採用する求人は、多くありません。ほとんどの求人は、ソフトウェア開発の経験があることを前提に、その上にLLMの技能を求めています。
それでも道はあります。1つは、自分で作って動かしたものを見せることです。Axial Searchの分析が指摘するとおり、「実際に動かしたシステムのポートフォリオ」は資格よりも重く見られます。この課程では、8つの総合プロジェクト(P1〜P8)を通じて、評価付き・デプロイ(公開)済み・設計判断を説明したREADME付きの作品を作ります。もう1つは、今の職場で実績を作ることです。営業、経理、カスタマーサポートなど、自分の業務を深く知っている人がAIで業務を改善した実績は、エンジニア経験の短さを補う強い材料になります。日本の求人がドメイン知識を歓迎しているのは、このためです。
症状:オンラインの修了証や資格をいくつも取ったのに、面接で「何を作りましたか」と聞かれて答えに詰まる。 原因:求人が見ているのは「実際の課題を解いた証拠」なのに、知識の証明に時間を使っている。 対処:資格は否定しませんが、優先順位を逆にします。小さくても自分の課題を解く作品を作り、評価の数字と設計判断をREADMEに書く。この課程の演習とプロジェクトは、そのための材料になるように作っています。
AIがコードを書く時代に、何が価値を持つか
現場で起きていること
2025年以降、コードを書く作業の多くをAIが担うようになりました。Claude Code や Codex のような「コーディングエージェント」は、指示を受けるとファイルを読み、計画を立て、コードを書き、テストを実行し、失敗したら直す、という作業を自分で進めます。
では、エンジニアの仕事はなくなるのでしょうか。現場のデータは、別の姿を示しています。
Stack Overflow の2025年開発者調査では、84%がAIツールを使っているか使う予定と答えました。一方で、AIの出力を「強く信頼している」人は3.1%しかいません。最も多かった不満は「ほぼ正しいが、完全ではない」出力で、66%がこれを挙げました。45.2%は「AIが書いたコードのデバッグのほうが時間がかかる」と答えています。
つまり、AIは大量のコードを素早く出してくれますが、そのコードは「だいたい合っているが、どこかが違う」ことが多い。その「どこか」を見つけて直すのは人間の仕事です。
Anthropic が行った実験(無作為化比較試験)では、AIの支援を受けながらプログラミングを学んだグループは、理解度テストの平均が50%で、AIなしのグループの67%を下回りました。差が最も大きかったのはデバッグの問題です。ただし、AIに概念の説明を求めながら学んだ人は、理解をよく保っていました。AIをどう使うかで、身につくものが大きく変わるということです。この使い方は次の章で詳しく扱います(→ 0-02 挫折しない学び方とAIの使い方)。
価値が上がる7つのスキル
研究ノートで集めた専門家の見解(Karpathy、Simon Willison、Anthropic、Thoughtworks など)と調査結果をまとめると、AIがコードを書く時代に価値が上がるのは次のスキルです。
- 仕様化:何を作るかを、曖昧さなく書く力。AIは曖昧な部分を勝手に埋めます。入力・出力・制約・例・受入条件を書けると、AIの出力が見違えるように良くなります(→ 3-03 仕様を書く技術)。
- コンテキスト設計:AIに何を見せるかを選ぶ力。必要な情報が足りなければ推測で書き、多すぎれば重要な点を見落とします(→ 3-04 コンテキストを渡す技術)。
- 検証とレビュー:出てきたコードを読み、仕様どおりか、境界の値やエラーのときにどうなるかを確かめる力(→ 3-05 AIが書いたコードをレビューする)。
- 評価:LLMアプリの出力の良し悪しを、数字で測る仕組みを作る力(→ 6-10 LLMアプリの評価)。
- デバッグ:壊れたときに原因を突き止める力。前述の実験で最も差が出たスキルです(→ 3-06 AIと一緒にデバッグする)。
- 設計:システムをどう分けるか、何をLLMに任せ何を普通のコードで書くかを決める力(→ 2-09 設計の基本)。
- ドメイン理解:業務そのものを知っていること。何が「正しい答え」かを判断できるのは、業務を知っている人だけです。
Karpathy は、AIと人間の協働を「生成と検証のループ」と表現しました。AIが生成し、人間が検証する。このループを速く回すには、AIの変更を小さく保ち、検証を簡単にする工夫が必要です。Simon Willison は「他人に説明できないコードはコミットしない」という原則を掲げています。コミット(commit)とは、変更を正式な履歴として記録することです。AIが書いたコードでも、責任を持つのは人間です。
「vibe coding(バイブコーディング)」という言葉があります。AIにコードを書かせ、中身を読まずに動けばよしとする作り方です。Willison は、使い捨ての個人的な道具なら問題ないとしつつ、他人が使うものや長く保守するものには向かないと指摘しています。この課程が目指すのは、AIを最大限使いながら、出てきたものに責任を持てるエンジニアです。
だからこの課程はこう教える
この課程の Python の章では、「ゼロから全部書ける」ことより「読める・直せる・説明できる・指示できる・検証できる」ことを優先します。ただし、読めるようになるには手で書く経験が欠かせません。だから演習は手で書きます。AIに頼るのは、自分で考えた後です。
もう1つの方針は、評価を最後の章だけで扱わないことです。課程のあちこちで「これをどう確かめるか」を問います。評価の考え方が身についていることは、求人の数字が示すとおり、他の候補者との最大の差になります。
課程の全体地図
Part 0〜9 で何ができるようになるか
この課程は10のPartと8つの総合プロジェクトでできています。
| Part | 内容 | 終えたときにできること |
|---|---|---|
| 0 はじめに | 仕事の理解、学び方、環境構築 | 学習計画を立て、Macと Colab で開発を始められる |
| 1 Python の基礎 | 値・型、文字列、リスト、辞書、関数、エラー、クラス、型ヒント | AIが書いたPythonを読み、説明し、直せる |
| 2 開発の基礎体力 | ターミナル、Git、uv、テスト、HTTP、SQL、非同期、設計、FastAPI | 小さなWeb APIを、テスト付きで作れる |
| 3 AIと一緒に開発する | Claude Code、仕様、コンテキスト、レビュー、デバッグ、安全 | コーディングエージェントに仕事を任せ、結果を検証できる |
| 4 データと機械学習の基礎 | NumPy、pandas、可視化、統計、機械学習、評価指標、埋め込み | 評価結果を統計的に読み、仕組みを理解して判断できる |
| 5 LLM の仕組み | 次のトークン予測、トークン、Transformer、サンプリング、幻覚、モデル選び | LLMの得意・不得意を原理から説明し、モデルを選べる |
| 6 LLM アプリ開発 | API、プロンプト、構造化出力、ツール呼び出し、RAG、評価 | 社内規程Q&Aのようなアプリを、評価付きで作れる |
| 7 AI エージェント | ワークフロー、エージェントループ、ツール設計、MCP、安全性 | ツールを使うエージェントを自作し、危険を管理できる |
| 8 本番運用 | 構成、オブザーバビリティ、コスト、セキュリティ、デプロイ、継続評価 | アプリを公開し、監視し、改善し続けられる |
| 9 一人前のエンジニアへ | 要件定義から納品、ポートフォリオ、学び続ける技術 | 仕事として案件を回し、自分の実績を説明できる |
総合プロジェクトは、Partの区切りごとに置いています。
- P1 売上CSVの集計CLI
- P2 問い合わせ自動分類
- P3 社内規程Q&A
- P4 調べものエージェント
- P5 自分用MCPサーバー
- P6 本番化とデプロイ
- P7 ファインチューニング実験(任意)
- P8 卒業制作
卒業制作(P8)では、自分で選んだ課題について、仕様を書き、Claude Code で実装し、評価し、公開し、READMEで設計判断を説明します。これがそのままポートフォリオになります。
学ぶ順番の理由
なぜこの順番なのかを説明しておきます。LLMアプリを早く作りたい人にとって、Part 1〜4は遠回りに見えるかもしれません。しかし、LLMのAPIから返ってくるのは、Pythonの辞書やリストが入れ子になったデータです。それを読めなければ、AIが書いたコードの誤りに気づけません。テストを知らなければ、AIの変更が何かを壊しても分かりません。統計を知らなければ、「20問中16問正解した」が良い結果なのか偶然なのか判断できません。
どの章も、後の章で必ず使う土台として選んでいます。一方で、目的によって深さは変えてよい。それが次の「ルート」の考え方です。
3つの目的別ルート
ルートの種類
課程の各章には、3つの目的ごとに優先度(必須・推奨・任意・不要)を付けています。
| ルート | こんな人に | 必須 | 推奨 | 任意・不要 |
|---|---|---|---|---|
| app:LLMアプリ・エージェント開発 | AIエンジニアとして転職・就職したい。製品を作りたい | 57章 | 19章 | 1章 |
| auto:業務でAI活用 | 今の仕事でAIを使いこなし、業務を自動化したい。エンジニア職は目指さない | 16章 | 39章 | 22章 |
| ml:MLエンジニア志望 | モデルの訓練や調整まで進みたい | 38章 | 35章 | 4章 |
この課程のメインは app ルートです。迷ったら app を選んでください。
ルートごとの進み方
app ルートは、Part 0〜9 をほぼ順番どおりに進みます。Part 4(データと機械学習)は「仕組みを理解して判断できる」深さでよく、評価に直結する 4-04 と 4-06、そして RAG の土台になる 4-08 が必須です。残りは推奨なので、先にPart 5〜7へ進み、必要になったら戻っても構いません。
auto ルートの必須は16章です。Python の基礎(Part 1の前半)、AIコーディングの全体像と仕様の書き方(3-01、3-03)、LLMの得意・不得意(5-05)、プロンプト(6-02)、セキュリティと法令(8-04)が中心です。目標は、自分の業務の手作業をAIとPythonで減らし、AIの出力を鵜呑みにせずに使えるようになることです。推奨の章は、自動化したい業務に関係するものから選んで読みます。
ml ルートは、Part 1を厚めにやり、Part 4(NumPy、pandas、統計、機械学習、ニューラルネットワーク)とPart 5(LLMの仕組み、Transformer)をすべて必須にしています。8-07 のファインチューニングも必須です。一方、Part 6〜7のアプリ開発は推奨で、深さは選べます。
アプリでは、各章の見出しの近くに、選んだルートでの優先度が表示されます。「推奨」の章は、時間があれば読む、くらいの気持ちで大丈夫です。「任意」は興味があれば。「不要」はそのルートでは飛ばしてよい章です。
最初は auto で始め、Pythonが楽しくなって app に切り替える人もいます。逆に、app で始めて、今の職場での活用に集中したくなったら auto に変えても構いません。ルートを変えても、それまでに学んだことは無駄になりません。
最初のPythonを動かす
実行してみる
ここからはアプリの中でコードを動かします。下のブロックの実行ボタンを押してください。
アプリで実行できるコード
print("こんにちは。AIエンジニア養成課程へようこそ。")print(...) は、かっこの中の値を画面に表示する命令です。Pythonでは、このような命令を関数(function)と呼びます。かっこの中の "..." は文字列(string)で、ダブルクォートで囲まれた部分がそのまま表示されます。
このアプリのPythonはブラウザの中で動いています。インターネットに接続せず、自分のパソコンの中だけで計算しています。だから何度実行しても費用はかかりませんし、何かを壊す心配もありません。気軽に書き換えて試してください。
print は何行でも並べられます。上から順に実行されます。
アプリで実行できるコード
print("Part 0 はじめに")
print("Part 1 Python の基礎")
print("Part", 2, "開発の基礎体力")3行目のように、カンマで区切って複数の値を渡すと、間に空白を入れて1行に表示します。2 にはダブルクォートが付いていません。これは文字列ではなく数(整数)です。
予想してから実行する
次のブロックは「予想ブロック」です。実行する前に、何が表示されるかを自分で予想してから実行してください。予想が外れたところに、理解が足りない部分が隠れています。
実行前に出力を予想する
print(1 + 2)
print("1" + "2")結果を見て、2行の違いを自分の言葉で説明できるでしょうか。ダブルクォートの有無が、Pythonにとってどんな意味を持つのか。値には「種類」があり、同じ + でも種類によって動作が変わります。この「値の種類」を型(type)と呼び、→ 1-01 値・型・変数 で詳しく学びます。
計算に使ってみる
Python は電卓としても使えます。この課程の学習時間を、ざっくり見積もってみます。
アプリで実行できるコード
chapters = 77
hours_per_chapter = 3.5
project_hours = 150
total = chapters * hours_per_chapter + project_hours
print("合計の目安:", total, "時間")
print("週10時間なら", total / 10, "週")chapters = 77 は、77 という値に chapters という名前を付ける書き方です。これを変数(variable)と呼びます。名前を付けておくと、後で何度も使えますし、何の数なのかが読み手に伝わります。* は掛け算、/ は割り算です。
1章あたり3.5時間(本文・演習・復習を含む)、プロジェクトに合計150時間という数字は、あくまで仮定です。自分の数字に書き換えて、もう一度実行してみてください。具体的な学習計画は次の章で立てます。
LLMアプリのコードをのぞいてみる
最後に、この課程の後半で書くことになるコードを少しだけ見ておきます。今は1行ずつ理解する必要はありません。「こういう形のものを作っていくのか」という雰囲気をつかんでください。
このアプリには、本物のLLMの代わりに決まったルールで答える「模擬LLM」(llmsim)が入っています。本物のLLM APIと同じ呼び出し方・同じ形の結果を返すので、ここで書いたコードは、少し書き換えるだけで本物のAPIでも動きます。
アプリで実行できるコード
from llmsim import OpenAI, Rules
rules = Rules()
rules.when("有給", "就業規則第12条により、有給休暇は入社6か月後から付与されます。")
rules.when("日当", "出張旅費規程第5条により、日当は1日2,000円です。")
rules.otherwise("規程に該当する記述が見つかりませんでした。総務部にお問い合わせください。")
client = OpenAI(responder=rules)
resp = client.chat.completions.create(
model="sim-small",
messages=[{"role": "user", "content": "有給休暇はいつから使えますか"}],
)
print(resp.choices[0].message.content)rules.when("有給", ...) は「質問に『有給』が含まれていたら、この文を返す」という模擬モデルの設定です。条文番号や金額は、練習用に作った架空のものです。本物のLLMはこのようなルールではなく、学習した知識と渡された文書から文章を生成します。そのため、言い回しは毎回少し変わりますし、規程にないことをもっともらしく答えてしまう(幻覚、hallucination)こともあります。
質問を変えると、返ってくる答えも変わります。
アプリで実行できるコード
for question in ["出張の日当を教えて", "社員食堂は何時まで?"]:
resp = client.chat.completions.create(
model="sim-small",
messages=[{"role": "user", "content": question}],
)
print("Q:", question)
print("A:", resp.choices[0].message.content)2つ目の質問には規程に答えがないので、「見つかりませんでした」と返しています。社内規程Q&Aでは、分からないことを正直に「分からない」と言えることが、正しく答えることと同じくらい重要です。
評価の考え方を一足先に
AIエンジニアの仕事で最も差がつくのは評価だ、と書きました。その一番小さな形を見ておきます。質問と「答えに含まれているべき言葉」の組を用意し、模擬LLMの回答を自動で採点します。
実行前に出力を予想する
tests = [
("有給はいつから?", "6か月"),
("日当はいくら?", "2,000円"),
("在宅勤務の申請方法は?", "申請"),
]
passed = 0
for question, expected in tests:
answer = client.chat.completions.create(
model="sim-small",
messages=[{"role": "user", "content": question}],
).choices[0].message.content
ok = expected in answer
passed = passed + (1 if ok else 0)
print("合格" if ok else "不合格", question)
print("合格数:", passed, "/", len(tests))3つ目の質問が合格するかどうか、ルールの中身と照らして予想してから実行してください。
結果を見ると、3つ目は不合格になっています。模擬モデルの規程には在宅勤務の情報がないからです。このように、期待する結果を先に書いておき、自動で照らし合わせる。この小さな仕組みが、課程の後半で作る本格的な評価(→ 6-10 LLMアプリの評価)の原型です。不合格の質問は「直すべき点のリスト」になります。規程を追加するのか、「分からない」と答えるのが正しいとして期待値を見直すのか。それを決めるのがエンジニアの判断です。
ここでは規程を追加する、と決めたことにします。ルールを1つ足して、同じテストをもう一度流します。
アプリで実行できるコード
rules.when("在宅勤務", "在宅勤務規程第3条により、前日までに勤怠システムから申請してください。")
passed = 0
for question, expected in tests:
answer = client.chat.completions.create(
model="sim-small",
messages=[{"role": "user", "content": question}],
).choices[0].message.content
if expected in answer:
passed = passed + 1
print("改善後の合格数:", passed, "/", len(tests))改善したら、同じテストで測り直す。これが「改善したつもりで実は悪化していた」を防ぐ基本の動作です。本物のLLMアプリでは、1か所を直したら別の質問の答えが悪くなることがよくあります。だから一部だけでなく、テスト全体を毎回流します。
症状:コードを書いて実行したのに、結果の欄に何も出ない。
原因:このアプリのPythonは、print で表示したものだけを出力します。Jupyter や Colab のように、最後の行の値が自動で表示されることはありません。
対処:表示したい値は print(...) で囲みます。例えば 1 + 2 だけを書いても何も出ませんが、print(1 + 2) なら 3 が表示されます。
有料のAIチャット(Claude、ChatGPT、Gemini)を使って、この章の理解を深められます。おすすめは「説明させる」より「質問させる」使い方です。
AIが間違えやすい点もあります。求人の数字や年収、ツールの料金や名前は、AIの学習時点で止まっているため、古い情報を自信を持って答えることがあります。数字が出てきたら、出典を尋ね、公式の情報で確かめる習慣をつけてください。
私は{職種・業務内容}をしています。最近、LLM(大規模言語モデル)を業務に使う方法を学び始めました。
次の手順で手伝ってください。
1. 私の業務について、時間がかかっている作業や、ミスが起きやすい作業を知るための質問を5つしてください。回答を待ってから次に進んでください。
2. 私の回答をもとに、LLMで改善できそうな作業を3つ挙げ、それぞれ「LLMが必要な理由」と「普通のプログラムやルールで足りる可能性」の両方を書いてください。
3. 一番効果がありそうなものについて、「成功したと判断する基準」を数字で提案してください。
推測で断定せず、分からないことは質問してください。演習
演習:3行を表示する
print を使って、次の3行をこの順で表示してください。文字は一字一句同じにします。
AIエンジニア養成課程
Part 0 はじめに
最初の一歩
解答例
print("AIエンジニア養成課程")
print("Part 0 はじめに")
print("最初の一歩")演習:学習期間を計算する
学習の合計時間 total_hours が 300 時間、1週間に使える時間 hours_per_week が 12 時間のとき、終わるまでの週数を変数 weeks に入れ、print で表示してください。
解答例
total_hours = 300
hours_per_week = 12
weeks = total_hours / hours_per_week
print("完了までの週数:", weeks)演習:業務を6段階に当てはめる
次の題材を、本文の「課題の発見 → 要件の整理 → プロトタイプ → 評価 → 本番化 → 運用と改善」の6段階に当てはめ、各段階で具体的に何をするかを1〜2文ずつ書いてください。
題材:営業部では、毎日20人の営業担当が日報(自由記述、1件300字程度)を書いている。部長は全員分を読んで、重要な案件や問題を拾い出すのに毎朝1時間かけている。
特に「評価」の段階では、何を測れば良し悪しが分かるかを具体的に書いてください。
解答例
1. 課題の発見:部長が毎朝1時間かけている「重要案件・問題の拾い出し」を短縮したい。部長にヒアリングし、何を「重要」と判断しているか(大口案件、失注の兆候、クレーム、競合の動き)を具体化する。そもそもLLMが必要か(キーワード検索で足りないか)も検討する。
2. 要件の整理:入力は前日の日報20件。出力は「重要案件」「問題・リスク」の箇条書きと、元の日報への参照。成功基準の例:部長が重要とした項目の9割以上を拾える、拾った項目の誤り(存在しない話)はゼロ、処理は朝8時までに完了、日報の個人情報を外部APIに送ってよいか社内規程を確認する。
3. プロトタイプ:過去1か月分の日報で、LLMに要約と重要度判定をさせる簡単なスクリプトを作る。
4. 評価:過去の日報から20日分を選び、部長に「本当に重要だった項目」を印付けしてもらう(正解データ)。システムの出力と照らし、見逃し率(重要なのに拾えなかった割合)と誤検出(重要でないものを拾った割合)、日報にない内容を書いた件数(幻覚)を数える。特に見逃しは致命的なので重く見る。
5. 本番化:毎朝自動で実行する仕組み、失敗時の再試行と通知、ログ保存、費用の上限、部長以外が見られないアクセス制限を整える。
6. 運用と改善:部長が「これは不要」「これが抜けている」と付けたフィードバックを毎週集め、見逃した例を評価データに追加し、プロンプトを直し、評価で改善を確かめてから反映する。演習:求人票を読み解いて計画に落とす
次の求人票(架空)を読み、(1) 必須条件と歓迎条件のスキルを「ソフトウェア開発の基礎」「LLMアプリの技能」「業務・ドメイン」の3つに分類し、(2) それぞれをこの課程のどのPart・章で身につけるか対応づけ、(3) 未経験から応募するために、課程のプロジェクトを使って何を作って見せるかを提案してください。
求人票:【AIエンジニア】製造業向け文書検索・エージェント開発
- 必須:Pythonでの開発経験、Web APIの設計・実装経験、Gitを使ったチーム開発
- 必須:LLMを使った開発の経験(業務または個人開発)
- 歓迎:RAGの構築と精度評価の経験、AIエージェントの開発経験、AWSまたはGCPの利用経験、製造業の業務知識
- 業務内容:顧客の技術文書を検索して回答するシステムのPoCから本番化まで、6〜12か月で担当
解答例
(1) 分類
- ソフトウェア開発の基礎:Python開発、Web APIの設計・実装、Gitでのチーム開発、クラウド(AWS/GCP)
- LLMアプリの技能:LLMを使った開発、RAGの構築と精度評価、AIエージェントの開発
- 業務・ドメイン:製造業の業務知識、PoCから本番化までの進め方
(2) 対応する章
- Python:Part 1 全体(特に 1-07 関数、1-08 エラー、1-11 ファイル・JSON、1-13 型ヒントと Pydantic)
- Web API:2-05 HTTP と Web API、2-10 FastAPI で API を作る
- Git:2-02 Git と GitHub
- クラウド:8-05 デプロイ(Cloud Run など)
- LLM開発:Part 6 の 6-01〜6-06
- RAGと精度評価:6-07〜6-09、6-10 評価、4-04 統計
- エージェント:Part 7
- PoCから本番化:9-01 要件定義から納品まで、Part 8
(3) 見せる作品
- P3 社内規程Q&A を発展させ、公開されている製造業の技術文書(例:規格の解説や製品マニュアルなど公開資料)を対象にしたRAGを作る。評価用の質問を50件以上作り、検索の再現率と回答の忠実性を数字で示す。
- P6 で FastAPI+Docker で公開し、ログと費用の監視を付ける。
- README に、チャンク分割の方法を比較した実験結果、失敗例の分類、PoCの成功基準を書く。
- 製造業の経験があれば、それを生かした題材を選び、ドメイン知識を説明できるようにする。理解度チェック
この課程が定義する「AIエンジニア」の説明として、最も適切なものはどれですか。
- ① 学習済みの基盤モデルをAPIで使い、データやツールと組み合わせて、評価し、製品として運用できる形にする人
- ② 大量のGPUを使って、新しい大規模言語モデルを一から訓練する人
- ③ データを分析して、経営判断に役立つレポートを作る人
- ④ AIに関する論文を読み、新しい学習手法を考案する人
解答と解説
正解:①
この課程のAIエンジニアは、モデルを作るのではなく使う側です。1つ目はMLエンジニアや研究者、3つ目はデータサイエンティスト、4つ目は研究者の仕事に近いものです。境界はあいまいですが、主な責任の置き場所が違います。
社内規程Q&Aのプロトタイプを社内でデモしたところ「すごい」と好評でした。次にやるべきこととして、最も適切なものはどれですか。
- ① 好評だったので、すぐに全社に公開する
- ② より高性能で高価なモデルに切り替える
- ③ よくある質問を集めた評価用データを作り、正しく答えられる割合と失敗の種類を測る
- ④ 画面のデザインを整えて、使いやすくする
解答と解説
正解:③
デモの好評は、想定した質問がうまくいったことしか示しません。本番では想定外の質問が来ます。まず評価用データで「何割正しいか」「どんな失敗があるか」を測ることで、公開してよいか、何を直すべきかが判断できます。モデルの変更も、評価なしでは良くなったか分かりません。
Stack Overflow の2025年調査で、AIツールについて最も多かった不満は「ほぼ正しいが、完全ではない」出力でした(66%)。この事実から、AIを使う開発者に最も求められると言えるのはどれですか。
- ① タイピングの速さ
- ② 出力を読み、どこが違うかを見つけて直す検証とデバッグの力
- ③ AIへの指示を丁寧な敬語で書く力
- ④ 複数のAIツールの料金プランを比較する力
解答と解説
正解:②
「ほぼ正しい」出力は、一見正しく見えるので誤りを見逃しやすいのが問題です。誤りを見つけて直すには、コードを読む力と、境界値やエラーを確かめる検証の力が必要です。同じ調査で45.2%が「AIのコードのデバッグのほうが時間がかかる」と答えていることも、これを裏付けます。
次のコードを実行すると、何が表示されますか。
print("3" + "4")
- ① 7
- ② 34
- ③ 3 4
- ④ エラーになる
解答と解説
正解:②
ダブルクォートで囲まれた "3" と "4" は数ではなく文字列です。文字列どうしの + は「つなげる」動作になるので、34 と表示されます。数として足したいときは、クォートを付けずに print(3 + 4) と書きます。
Simon Willison が掲げる、AIが書いたコードについての原則に最も近いものはどれですか。
- ① AIが書いたコードは、テストが通れば読まなくてよい
- ② AIが書いたコードは、信頼できないので使わない
- ③ AIが書いたコードには、必ずAIが書いたことをコメントで明記する
- ④ 他人にそのコードが何をするか説明できないなら、コミットしない
解答と解説
正解:④
Willison は、AIの利用自体を否定していません。使い捨ての道具なら中身を読まない vibe coding も認めています。ただし、正式な履歴として残し他人が使うコードについては、自分が説明できることを条件にしています。責任を持つのは、AIではなく人間だからです。
経理部で働いていて、エンジニアに転職するつもりはないが、毎月の請求書処理などの手作業をAIとPythonで減らしたいと考えています。この課程のルートとして最も合うものはどれですか。
- ① app ルート。すべての章を必須として順番に進める
- ② auto ルート。必須の16章を中心に進め、自動化したい業務に関係する推奨章を選んで読む
- ③ ml ルート。まず機械学習とニューラルネットワークの仕組みを深く学ぶ
- ④ どのルートも合わないので、課程は使わない
解答と解説
正解:②
auto ルートは、業務でAIを使いこなし自動化したい人のためのルートです。Pythonの基礎、AIへの仕様の伝え方、LLMの得意・不得意、プロンプト、セキュリティが必須です。途中で開発そのものが面白くなったら、app ルートに切り替えても構いません。
日本の「AIエンジニア」求人について、研究ノートで確認できた傾向として正しいものはどれですか。
- ① ほとんどの求人が、未経験者を歓迎している
- ② LLMの技能さえあれば、ソフトウェア開発の経験は問われない
- ③ Web開発などソフトウェア開発の経験が前提とされることが多いが、個人開発でのLLM経験を認める求人もある
- ④ 博士号を持つ人だけが応募できる
解答と解説
正解:③
確認できた求人の多くは、サーバー側の開発経験などを必須条件にしていました。一方で「個人開発レベルでも可」と明記した求人もあります。だから未経験からは、評価付きで動く作品(ポートフォリオ)と、業務知識を生かした実績づくりが鍵になります。
まとめ
- この課程のAIエンジニアは、学習済みの基盤モデルをAPIで使い、データやツールと組み合わせて、評価し、製品として運用する人。モデルを一から訓練する仕事ではない。
- 仕事は「課題の発見 → 要件の整理 → プロトタイプ → 評価 → 本番化 → 運用と改善」の流れで進み、何度も行き来する。
- 成功基準は事前に、測れる形で決める。デモの好評は成功基準にならない。
- 求人では、Python・LLM API・バックエンドが前提で、エージェント・評価・オブザーバビリティの比重が増えている。日本ではRAG、エージェント、PoCから本番化、ドメイン知識が目立つ。
- 未経験からは、評価の数字と設計判断を示せるポートフォリオと、今の業務での実績が鍵になる。
- AIがコードを書く時代に価値が上がるのは、仕様化、コンテキスト設計、検証とレビュー、評価、デバッグ、設計、ドメイン理解。
- 課程は Part 0〜9 と8つのプロジェクトで構成され、app(メイン)・auto・ml の3つのルートで優先度が変わる。
- アプリ内のPythonは
printで表示したものだけが出力される。予想してから実行する習慣をここから始める。
参考資料
いずれも任意です。この課程はアプリ内で学習が完結するように作っています。英語の資料は、AIに要約や翻訳を頼みながら読んでも構いません。
- roadmap.sh AI Engineer:AIエンジニアの学習項目の地図(英語)
- swyx「The Rise of the AI Engineer」:AIエンジニアという呼び名を広めた2023年の記事(英語)
- Stack Overflow Developer Survey 2025 の AI の章:開発者のAI利用と信頼度の調査(英語)
- Simon Willison「Not all AI-assisted programming is vibe coding」:vibe coding と責任あるAI支援開発の違い(英語)
- Anthropic「Building effective agents」:エージェントを作るときの基本的な考え方(英語、Part 7で詳しく扱います)
Groundwork AIエンジニア養成課程:AIエンジニアを目指す人のための全85章の課程。Pythonの基礎、Git・テスト、Claude CodeやCodexと一緒に開発する方法、LLMの仕組みとアプリ開発までを、ブラウザで動くPythonで。最初の6章は無料。全章は2,480円の買い切り。
アプリを無料で開く有料版と無料版の違い